その後のことはあまりよく覚えていない。いや、料理も酒も会話もそれなりに楽しんで、充実した時間を過ごしたことは確かだ。
ただ、その中で自分の意識は常にリンウェルへと向いていた。
リンウェルには彼氏がいないと友人は言っていた。それに反論は出なかったし、何よりリンウェル本人が慌てて視線を逸らしたところから、おおよそそれが真実であることは確信している。理由は分からないが、リンウェルは彼氏がいると俺に嘘をついていたのだ。
一方でリンウェルがこの会に参加していることは、それとはまた別の話だ。格好、態度からして無理やり参加させられたというわけでもない。あいつは今夜出会いを求めてこの場に来た。
それはつまり、リンウェルは今日この場で出会った奴とそういう仲になる可能性があるということだ。そんなの俺は許さない。別にこいつらに問題があるというわけではなく、単に俺がそれを認めないというだけだ。
俺は目を光らせた。リンウェルが誰と、どんな会話をしているのか聞き耳を立てた。そしてさりげなくそれに参加しては男連中に目で牽制しておく。『手ぇ出すなよ』。
そんなことに気を張り巡らせているうち、料理も酒も気がついたら尽きていた。そういうわけで、リンウェル絡み以外のことはあまり覚えていないのだ。
皆が二次会に向かおうとする中で、俺はリンウェルに声を掛けた。
「抜けようぜ」
その声は皆に筒抜けとなっていたらしく、男連中からはブーイングの嵐だった。
「おい、連れてくなよ!」
「昔馴染みだからって狡いぞ!」
別にそういうわけじゃない。そういうわけじゃなくて、そういう意味で抜けようと言ったのだ。
俺の言葉に、リンウェルは小さく頷いた。女性陣からはきゃあきゃあと黄色い声が上がる。
「きゃー大胆! 良かったね、リンウェル!」
「その子のことよろしくね、ロウくん!」
背中を叩かれ、どうもと頭を下げると、皆は次の酒場の方へと去って行った。その場には自分とリンウェルだけが取り残される。酒場の喧騒がどこか遠い。
「別れちゃってたんだね」
街灯がぼんやり照らす道の上で、リンウェルが呟いた。
「いつ?」
「お前と会う、少し前」
あれはまだちょっと寝つきが悪かった頃だ。
「それならそうと言ってくれれば良かったのに」
「それはなんか、お前が彼女いる体で接してくるから」
言うタイミングを逃した、というのが半分。過去の話に出来るほど吹っ切れていなかったというのが半分。いずれも今にしてみれば情けなくもある。
「お前こそ、なんで彼氏いるなんて嘘ついたんだよ」
リンウェルは視線を逸らし、不本意そうに口を尖らせる。
「だって、ロウに彼女いるっていうから……なんか悔しくて」
悔しいって何だ。何を競っていたんだ。
「じゃあ、予定とかそういうのは」
「全部嘘。こないだ話したデートの場所とかも、昔付き合ってた人とのこと言ってただけ」
もう二年も前のことだけど、とリンウェルは肩をすくめた。
「このままじゃダメだなって思ってて、彼氏作るぞってせっかく勇気出したとこだったのに。まさかロウがいるなんて」
食事会に参加した理由もほとんど自分と同じだった。嘘が嘘と知られないうちに真実にするはずが、まさか鉢合わせすることになろうとは。
「どう? いい出会いはあった? 久々に女の子に囲まれた気持ちは?」
「お前こそ。可愛い可愛いって男に持ちあげられて気持ち良かったろ?」
そんな皮肉めいた言葉を投げ合ったところで、二人同時にぷっと吹き出した。
「ばかばかしい! なによ、全部嘘だったの? 俺は彼女に愛されてるから云々とか、そういうのも?」
「うるせー! お前だって彼氏に貰ったプレゼントがどうのとか自慢してきてただろ! 自分で買ったものを見せびらかして恥ずかしくねーのか!」
涙が出るほど笑いながら積み上げてきた嘘を崩し合う。こんなハリボテみたいなものに自分たちはまんまと騙されてきたわけだ。
「こんなことってある? 2人して同じ嘘ついて、同じ食事会に来るとか」
まったくだ、間が悪いにもほどがある。世界は広いといったがあれは嘘だ。自分たちの周りだけやたらと狭すぎやしないか。
「大体ロウが見栄張るからこんなことになったんだからね!」
「お前がはじめから勘違いしてるのが悪いんだろ! おまけにややこしくなる嘘までつきやがって」
くだらない。あまりのくだらなさに呆れて、せいせいした。のしかかっていた肩の荷が全部下りたようだった。
ひとしきり笑った後で、「これからどうする」と訊ねた。この関係をどうするか、という意味で聞いたつもりだった。
リンウェルは少し考えた後で、
「とりあえず家行こっか」と言った。夜は更けていたが、日付が変わるにはもう少しかかるだろうという時分だった。
リンウェルの家に着いてドアが閉まると、俺たちはなんとなくキスをした。今までも会えばそうしていたし、そうすることに特に違和感はなかった。
それでも何故か身体はひどく興奮していた。唇が合わさるたびに、リンウェルの吐息が耳元で聞こえるたびに胸の中から何か熱いものが滲み出してくるのが分かった。
リンウェルもきっと同様だったのだろう、背に腕を回してきたと思うと、もうほとんど俺にしがみつくような格好になった。肩で呼吸をしているのに、それでも必死に舌を差し出してくる。それに吸い付けば根っこの方でほのかに酒精が香った。
ふと唇が離れると、リンウェルはすぐさま視線を逸らした。
「どうした?」
「だってなんか、恥ずかしくて」
恥ずかしいというのは、自分とこういうことをしているというのが? あるいは今日の出来事が?
ふるふると頭を振って、リンウェルが俯く。
「キスだけで、すごく気持ちいいから」
なるほど、それで腰を揺らしていたのか。脚を摺り寄せているのもそれが理由なのだろう。
ふっと笑って、リンウェルの身体を引き寄せる。
「俺もすげえ気持ちいい」
腰を大腿に押し付けると、リンウェルの身体がびくりと震えた。こちらの言いたいことは充分伝わったようだ。
「ベッドがいいか?」
その問いに小さく頷いたのを確認して、身体を横抱きにする。明かりも点けずにそのまま寝室へと向かうと、リンウェルごとベッドの上へと倒れ込んだ。
上着を脱ぎ捨て、首筋に顔を埋めると甘い香りがした。これまでに何度も味わった、リンウェル自身から放たれる甘い香りだ。
「くすぐった――ひあっ……!」
そこに舌を這わせた途端、リンウェルは高い声を上げた。びくびくと身体を震わせながら、逃れようと身を捩る。
当然そうはさせまいと腕を封じて、もう片方の腕でリンウェルのブラウスを暴いた。合間から覗いた可愛らしい水色の下着がリンウェルによく似合っていた。
布の上から胸を揉みしだくと、リンウェルから短い声が上がった。気を良くしてしばらくそうしていると、頭の上から不満そうな声が聞こえてくる。
「直接触ってよ……」
への字に曲がった唇にキスを落とし、浮いた背に手を差し入れて下着のホックをぱちんと外す。緩んだ下着を上に押しやって、露わになった膨らみに手を掛ければ、リンウェルの吐息に甘さが増した。
まあるいそれはいつ見ても形が良い。大きさもちょうど良くて、まるで自分の手のひらに合わせて作られたのではないかと思うほどだ。驚くくらい柔らかいのに、それでいて適度な弾力がある。指に吸い付くような感触が堪らない。てっぺんにあるピンクの飾りも魅力的だ。
「すげえきれいで、可愛い」
思わずそんな感想が声となって転がり出た。
それを聞いたリンウェルは一瞬目を見開いたあとで、「今までそんなこと言わなかったのに」と、拗ねたような声でぼやいた。それはそうだ。ほかの男のものを褒めて何になるというのだろう。
そんなことは言わないにしても、今口にした言葉は決して嘘でも思い付きでも何でもない。これまで何度もそう思いながらも、ずっと心の中に秘め続けてきたことだった。
そういったことは他にもたくさんある。キスをしている時の顔も、声も、ためらいがちに動かす舌も可愛いと思う。耳が弱いところも、胸を弄ればすぐに声を上げてしまうところも、濡れやすいところだって全部可愛い。
可愛いと思いながらも、口にはできなかった。口にしてもリンウェルを困らせるだけだっただろうし、何よりそれを独占できる相手の男に腹が立った。自分は結局、嫉妬に狂っていたのだ。それらもただ自分の秘め損で、狂い損だった。こんな嬉しい損は他にない。
「これからは毎回言う」
「毎回はちょっと恥ずかしい、かも」
「安心しろ。もっと恥ずかしくさせてやるから」
言うなり突起に吸い付くと、リンウェルはやっぱり高い声を上げた。舌でべろりとそれを舐め上げるたび、リンウェルの身体がぞくりと震える。もう片方の突起も指で摘まんでやれば、絶え間ない刺激にリンウェルの腰が揺れるのが見えた。
想像通り、下着には大きな染みができていた。おそらくキスの時点で濡らしていたのだとは思うが、これではもはや下着の体をなしていない。
それを足首まで摺り下ろし、脚を大きく開かせると、大腿に手を掛ける。
「な、なに……?」
「何って、お前が好きなやつ」
そう言うと、脚の間に顔を埋めた。秘部に舌を這わせ、唾液を塗りたくる。
「あ、あっ、や、やだぁっ、は、あんっ」
ひくつくナカからは愛液が零れてくる。同時に広がる雌の匂いに頭がくらくらとした。
こうするのは久々だ。最近は快楽を急ぐばかりでゆっくりリンウェルを味わうこともしなかった。お詫びというわけでもないが、今夜はじっくりねぶることにする。
舌先で愛液を舐め取りながら、指で薄い茂みを探った。中からぷくりと腫れ上がった陰核を見つけ出すと、今度はそれを唇で愛撫する。
「いやぁっ、だめっ、そこよわいから……っ!」
弱いからこそだろう、と思いながら執拗にそこを責め立てると、リンウェルの内腿が震えるのが分かった。
「だめ、イ、イっちゃ、イっちゃう、イくからぁっ」
無意識に逃れようとする腰を捕らえたまま、秘部を吸い上げる。ついでに指で陰核を擦り上げてやると、リンウェルはひと際大きな声を上げて絶頂を迎えた。
「イくって言ったのに……」
悔しそうな顔でそんなことを言って、リンウェルは枕でそれを覆った。そんな仕草もいじらしくてたまらない。
イくというからイかせてやったのだ。何度イったっていい。イけばイくだけお前は可愛いし、こちらはそれを見たくて行為に耽っている部分もあるのだから。
とはいえ自分もそろそろ限界だ。いざ挿入しようと思ったところで、手を止める。
「……どうしたの?」
「いや……俺、けっこう酷かったよな。避妊具も着けねえし、お前に任せてばっかで」
ふと過ったのは、これまでの自らの行いだ。避妊に関しては、リンウェルが薬を飲んでいるならいいかと自分は何もしなかった。避妊具は着けない方が気持ちいいという実に勝手な考えもあったし、何より面倒だったのだ。
「ヤってる時も、お前がいやだって言ってるのにやめないし、サイテーだったなと思って」
思えば、ひたすら自分の快楽を貪るばかりだった。リンウェルのことを労わっていたかと問われると、正直怪しい。無理やりしていたつもりはないが、それでも自分本位であったことには変わりない。どこまでも反省すべきことばかりだ。
それなのに、リンウェルはきょとんとした顔でこちらを見つめるだけだった。そして小さく首を傾げて、
「そう? 私はそんなふうに思ったことないけど」と言った。
「え?」
「私、嫌々薬飲んでたわけじゃないよ。その方がいいかなって飲んでただけだし。それにロウだって、避妊具着けるの嫌がってたわけじゃないでしょ」
「それは、まあ……」
確かに着けるのは面倒だったが、着けてと言われたら拒否はしなかっただろう。それがリンウェルからの言葉なら、なおさら。
「それに、その……エッチの最中の『いや』っていうのは、別に本気じゃないし。分かるでしょ、私が本気で嫌がってるなら」
リンウェルの言う通りだと思った。きっと分かる。本気で嫌なら、こいつは全力で抵抗するはずなのだ。自分とリンウェルは互いに遠慮し合うようなそんな間柄ではない。
ふと、リンウェルがこちらへと擦り寄ってくる。その腕を俺の首へと回し、そっと口づけた後でひっそりと囁いた。
「ロウとすること全部気持ちいいよ。気持ちいいから好きなの。ロウとするの、好き」
熱を孕んだ声に胸が熱くなる。思わず背に手を回し、きつく抱き締めると、胸いっぱいにリンウェルの香りが広がった。
「んなこと言われたら、止まんねえぞ」
「いいんだよそれで。もっとしよ。付き合うとか付き合わないとかも、その後でいい。だって私たちの関係、何か変わるの?」
変わるだろ、と言おうとしてやめた。リンウェルが言いたいのは、そういうことじゃない。
今までもこれからも、持ち合わせる気持ちは同じだ。そこに大きな変化はない。ただちょっと今までより堂々とできて、二人で出掛けることも増えて、一緒にいる時間が長くなるだけ。夜にだけ楽しんでいたことは、朝にも昼にも増えるかもしれないが。
視線を合わせて、キスをした。触れた頬は熱くて、柔い肌の感触が心地良かった。
脚を開かせ、秘部に自身の先端を押し当てる。悩んだ挙句に避妊具を着けたのは、けじめというか、過去の自分と決別しようと思ってのことだった。リンウェルはそれをくすくすと笑いながらも「気遣いと思うことにするね」と言ってくれた。
割って入ったリンウェルのナカは温かかった。ほんの数日前にも訪れたはずなのに、その感触はまるで違うものみたいだった。
腰を引くたびにリンウェルの粘膜が絡みついてくるのが分かる。避妊具で感度が落ちているにも関わらず、ほんの少し動いただけで背中に甘い痺れが走る。
「やべえ……」
これはちょっと、今までに味わったことがない。下半身だけでなく、頭の芯から蕩けそうなほど気持ちいい。
誤魔化すように大きく腰を動かすと、一層それは強まった。なんてことだ、止まっても動いても迫ってくる快楽はどこにも逃げ場がない。
「もうイっちまいそう……」
「いいよ、イっても」
ぐいと手を引いて俺の頭を抱え込むと、リンウェルが自ら腰を揺らす。
「ほら、イっちゃえ」
「だ、だめだって……っ……!」
予測のつかない動きに翻弄され、たまらず熱が爆ぜる。なおも自分を捕らえて離さない内壁は長い射精を促した。
「いっぱい出た?」
「……おかげさまで」
ふふっと笑うリンウェルの腕は解かれないままだ。
「まだだよ。もっとするの」
望むところだと避妊具を外し、ゴミ箱へと放る。
その瞬間にもリンウェルはキスをせがんできて、愛おしさはやまない。唇も皮膚も離れている間がなく、必ずどこかでリンウェルと繋がっている。もしかしたら自分たちは本当にひとつになったのかもしれない。
自身に復活の兆しが見え始めると、リンウェルを転がして四つん這いにさせた。背中に覆い被さるようにして挿入すると、先ほどよりも深いところまで先端が食い込む。
「後ろからするの、すき、」
「知ってる」
交尾みたい、と呟くリンウェルの背にキスをして、胸を後ろから鷲掴みにする。同時に激しく腰を打ち付ければ、リンウェルの身体ががくがくと震えた。
腕を引き、半分だけの唇にキスをする。これは交尾じゃない、セックスだと言い聞かせてやったのだ。そうした途端にナカの締め付けが激しくなって、リンウェルが軽く達するのが分かった。
脱力し、シーツに身体を投げ出してもなお、リンウェルはその手を広げた。
「ねえ、キスして」
どこに、なんて戯れは無しにして、唇を合わせると同時に挿入する。悲鳴のような嬌声が口端から漏れ、それに気分を良くすると、舌先を絡め合ったまま律動を再開した。銀の糸がついたり離れたりを繰り返しながら、自分たちの間を彷徨う。
リンウェルの脚が腰に引っ付き、その距離が近づくと一層熱も高まった。触れ合った胸から温度が伝わり、鼓動が伝わる。すっかりひとつとなったそれを全身で感じて視線を落とすと、リンウェルと目が合った。
「すき」
零れた声を拾い上げて細い身体を掻き抱く。やっと言えた、なんて言って、リンウェルが笑った。
「ずっと我慢してたの。ロウには彼女がいるから、言えなくて」
堪えていたのは自分だけではなかった。リンウェルもまた、行為以上のものを募らせていた。
「ロウはどうだったの。私に彼氏いるって聞いて」
リンウェルの指が髪を撫で、頬に触れる。
「やきもち、妬いてくれた?」
何を今さら。リンウェルの手に頬を摺り寄せると、その小さな手のひらに口づけた。
「妬いた。妬くに決まってんだろ」
初めはどうだったか覚えていない。それでも多少は面白くなかったはずだ。こんなに可愛く啼く女が他の男のものだなんて。
「お前が他の男とセックスしてるって思うと、すげえ腹立った。俺の方がいいだろって、ずっと思ってた」
自分が一番リンウェルを感じさせることができる。乱れさせられる。自信過剰ながらも、そう確信していた。それほどに自分の下で喘ぐリンウェルは魅力的だったのだ。
「ロウとのエッチ、気持ちいいよ。何回でもしたいって思っちゃう」
そんなたまらないことを言って、リンウェルが親指で唇をなぞる。その瞳に自分が、自分だけが映っている。
「一番いいか」
「一番って、比べる対象がいないんだけど」
「昔の彼氏よりもいいか」
なんて小さい器だろう。そんなことは自分が一番よく分かっている。それでも問わずにはいられない。今この瞬間、そしてこの先も、リンウェルの一番は自分でないと気が済まない。
昔彼女と別れた際、比較されて傷ついたのは他でもない自分だったのに。それをさしおいても今この時、誰かと比較した上で自分を選んでほしいと、そう思ってしまうのだ。
うん、とリンウェルがはっきり頷いた。当たり前でしょ、という言葉を遮って、何度も口づける。唇、頬、額。首筋から耳まで。届かないところは自身の先で。
またリンウェルが甘く啼いた。部屋に響くそれが何よりの賞賛で、胸が燃えたように熱くなる。自分は今ようやく、リンウェルを手に入れたのだ。
そこから果てるまではさほど時間はかからなかった。ほとんど同時に達し、唇を合わせながら二人でシーツの上を転がる。「好きだ」と口にして、リンウェルがそれに「私も」と応える。「俺と付き合って欲しい」と言って、「いいよ」と返ってくる。
随分と大きな遠回りだった。それどころか、その道順まで違えながらよくもまあ自分たちはここまで辿り着いたものだ。
身体が先か、気持ちが先か。そんなのはどうだっていい。そのどちらもぴたりと重なっている今、順序なんて関係ない。
できればこの先一生、重なったままでいたい。心も身体も重なったままで、些細な嘘にも張った見栄にもふたりで笑い転げていたいと切に思った。
終わり