朝から盛るロウくんの話。(約3,000字)

☆その1

「おーい、起きろー」
「うう、ん……」
 声掛けに小さな反応は見せたものの、リンウェルがその目を開ける気配はない。なんなら一枚しかないタオルケットを奪って再び寝息を立ててしまう始末だ。
「明日の朝は絶対起こしてよ!」なんて注文を付けてきたのは誰だったか。こっちは二度寝したい気持ちを堪えて時間通りに声を掛けてやったというのに。その健気さを一蹴するかのように「うーん、あと10分……」なんて呟いたことをきっとこいつは覚えちゃいない。
「おーい、起きなくていいのかー?」 
 今度は反応も見せない。
 器用に腹だけに掛けられたタオルケットはリンウェルの呼吸に合わせてゆっくりと上下を繰り返している。
 目線を上へと持って行くと、リンウェルの寝間着が目に入った。ボタンが二つほど外れた隙間からは可愛らしい水色の下着が覗いている。
 隙だらけだな、と思わないこともない。だがそれがまた愛おしいのだ。すっかり油断したリンウェルの一面を見られるのは世界でただ一人、自分だけだと思うと何故か優越感で一杯になる。
 その時ふと己の頭に過った考えは、この上なく極上でたちが悪かった。リンウェルの怒った顔が浮かんでは来るが、あまりに甘美なそれに抗う術などない。
「起きないと襲っちまうぞー」
 わざと聞こえないような小声でそう言って、3秒ほど間を置いた。リンウェルにしてみればそれが最後のチャンスだったわけだが、聞こえていないのなら仕方ない。
 お邪魔します、と手を合わせてからリンウェルに跨ると、その胸の膨らみに手を掛ける。
 はじめは起こさないように優しく。下からゆっくりと持ち上げるように。
「ん……」
 それでもまだリンウェルは僅かにしか反応を見せない。
 そうだ、そうこなくちゃな!
 続いて手のひら全体で両胸を揉みしだいてやる。寝間着、下着越しとは言えどこのやわらかさにはいつも驚く。何度何回味わおうとも、決して飽きることはない。  結局先に限界が来たのはこちらの方だった。
 直に触りたい。あの吸いつくような素肌の感触に勝るものはない。
 タオルケットを剥ぎ取り、正面のボタンを一つずつ外していく。露になったリンウェルの上半身はやっぱりいつも通りきれいだった。
 先ほどの戯れでほんの少しはだけてしまった下着をずらすと、ピンク色の可愛らしい突起とまみえた。ぷくっと膨らんだそれを指でつまめばリンウェルの身体がぴくっと反応する。
「ん、う……」
 それでもまだ目は開いていない。
 ならばこれではどうだろう。
 先端を口に含んで舌で転がす。空いた方は指先で何度も弾いてより硬さを持たせる。
 動きに合わせてふるふると震えるそれがあまり愛おしいので、乳房ごと中央に寄せて交互に舌で嬲ってやると、とうとうリンウェルが目を覚ました。
「んん……ロウ……?」
「お、起きたか」
「って、なに!? えっ、なにして……!」
「なにって、……愛撫?」
 そう言ってまた先端を強く吸い上げる。すっかり唾液に塗れたそこは朝日を浴びて輝きを増していた。
「あッ、あんっ……ぁあっ! や、やだぁ……ッ!」
「お前起きねえからさ。俺がこうしてても気づかねえんだもん」
「っばか……っ!」
 頭を押しのけようとするリンウェルの手もどんどん弱くなっていく。そうだよな、気持ちいいことには抗えないもんな、お前。
 リンウェルの脚がもぞもぞと動き始めていることにも気づいていた。時折揺れる腰はさらなる刺激を求めているのだろう。
 嫌だとか散々言っておきながらこんなふうになっているなんて、本当にいやらしくてかわいくて最高だ。
「なんでおっきくしてるの!」
「いや、当たり前だろ」  
 こんな状況で興奮しない方がおかしいだろ。「お前がかわいいから勃ってんだよ」
「~~っ、ばか……!」
 散々悪態をついても本気で抵抗はしてこない。つまりは許可が下りたということだろう。
 それでも一応お伺いは立ててみる。俺は紳士だからな、と言いつつも半分はリンウェルの返答が聞きたいからだ。
「なあ」
「……」
「挿入れていい?」
 涙目で頷くだけのリンウェルに今日初めてのキスを落とし、避妊具を漁る。
 装着を完了させそちらに目をやると、リンウェルが履いていたものを自ら脱ぎ終えたところだった。
「……なんか、イイな」
 しみじみとそう口に出すと、腕に無言の攻撃を受けた。素直な感想だったはずが、変態の言葉と取られたらしい。
「あ」
 そういえばリンウェルの具合を確認していなかった。つい夢中になって挿入れることばかりが先行してしまっていた。
「ナカ、慣らした方がいいよな」
 そう言って指を挿入しようとしていると、リンウェルがふるふると頭を振った。
「もう、だいじょぶ……」
 たぶん、と付け加えてリンウェルは顔を枕で隠してしまった。
 なるほど、寝ているときからそうだったのかは知らないが、あの愛撫でしっかり感じていたわけだ。
 いじらしい仕草に胸を撃ち抜かれながらも、秘部に己のいきり立ったものを添わせてやれば、申告があった通りそこは充分に濡れそぼっていた。 今すぐ挿入れてしまいたい。だがそれではなんだか勿体ない気もする。
 迷いを示すかのように薄い茂みに先端を擦り付けていると、上から声が掛かった。
「ねえ、やだ…っ、それ……」
そう言って腰をくねらせるリンウェルは、ひどくもどかしい思いをしているらしい。
「ねえ、はやく……」
「はやく、なんだ?」
 意地が悪いのは百も承知だ。だがこんな機会をみすみす逃すほど、自分はそう甘くない。
「ねえ」
「ん?」
「……いれて、おねがい」
 耳に届いた声に昂ると自身が一層硬さを増す。
 かわいい、たまらない。
「っ、あぁ……――っ!」
 滑らせるようにして挿入した先に待っていたのはこの上ない極上の空間だった。
「……あ…やべ……」
 一気に最奥まで到達すると、ナカがきゅうと締まる。押し寄せる粘膜のにゅるにゅるとした感覚が簡単にこちらを追い込んでいく。
「キモチよすぎ……ちんこ溶けそう……」 
 いつの間にか枕を手放していたリンウェルは、今や全身を震わせて快感に身悶えていた。その両手に指を絡めて唇を合わせる。口端から零れる吐息はもうどちらのものかなんてわからない。
「んう、あっ、ろう、すき、すきッ」
 呼吸をするよりも先にこちらの名前を呼ぶのが愛おしい。
 何も考えられなくなった先にあるのが自分の名前だなんて、こんな嬉しいことがあるだろうか。
「すき、ろ…う……っ!」
「俺も、すきだ、リンウェル……っ」
 アイの言葉を交わしながら激しくナカを掻き乱す。絡みついてくる内壁は避妊具越しでもその感触がわかるほどに蠢き、こちらを離すまいとしてくる。
 限界が近いことを察してリンウェルの脚を抱え込むと、上へと覆いかぶさった。
 リンウェルがひどく抵抗する体位だが、それもキスで封じてやればその細い腕が首へと回る。
「イってもいいか?」
「……たし、も、…い、っちゃ……!」
 唇の隙間から漏れた声にスパートを掛けるとリンウェルのナカが激しく収縮し、ナカがビクビクと痙攣をおこした。その刺激で込み上げてきたものを一気に吐き出して、深く息を吐く。
 流石に怠さを感じて脱力すると、腕の中にいたリンウェルと目が合った。乱れた髪からはシャンプーのいい香りがする。
「起きたか?」
「ばか……」
「そればっかだな」
「もう頼まないもん」
 拗ねた顔もまた一段と可愛い。力が入らないのか、腕をつねってくる指も弱弱しいままだ。
「……お腹空いた」
「はいはいお姫様、何にします?」
「フレンチトースト。はちみつかけて」
「りょーかい」
 今日は一日、姫のご機嫌取りとなりそうだ。
 時計の針は既に九時を回っている。

終わり

ちんこ溶けそう、って言わせたかっただけ