「おい、」
いいでしょ、たまには。
下着ごとロウが履いているものを下ろし、露わになった陰茎に躊躇いもなく口付ける。まだまだ柔いそれは雄のにおいを纏っていた。
リンウェルがこういった行為に走ったのは単なる思いつきからだ。
ベッドで寛ぐロウを見てなんとなく、そうしたいと思った。
とはいえきっかけみたいなものはある。思い当たる節があるのだ。多分、確証はないが。
今日の昼間、研究仲間から恋人を紹介された。付き合ってまだひと月も経たないという二人は甘い雰囲気を漂わせ、それはそれは仲睦まじく会話を交わしていた。ともすればすぐにでも指を絡ませてしまいそうな二人の距離に若さというか青さを感じた。自分とさほど年齢差はないのだが。
リンウェルとロウとの付き合いは数年になる。当初はそうであったのかもしれないが、あんなふうに一気に燃え上がるような感情は既に持ち合わせてはいない。
良く言えば落ち着いたのだ。ロウと過ごす時間は穏やかで、安心する。
だから羨ましく思ったとか、そういうわけではないと思う。あの二人が今楽しんでいるものは、既に自分たちが得たものなのだ。 それでも何故か自分はこういった行為に及んでしまっている。ロウの陰茎に指を添え、唾液を潤滑油としながら上下に扱き上げていく。
次第に質量を増したそれが天を仰ぐようになるとちょっとした達成感を味わえる。あらためてその先端を口に含み、舌で表面をちろちろと嬲った。袋の部分も優しく撫でながら。
「……っ……」
反応を見せたロウは小さな声をあげた。すっかりその気となってしまったのか、こちらの頭を押さえつけ、そこから離れることを許さない。先端からはぬるぬるとした先走りが垂れてきていて、粘性のあるそれが舌にまとわりつくのを感じた。仄かな苦味にまた少し満足して、リンウェルは扱く手の動きを早める。
「後ろ向け」
ロウに言われるまま跨る位置を変えると、履いていたものを脱がされる。外気にさらされた脚が少し寒い。
「チンコ舐めて濡らしてんのか」
「ーーあッ…!」
突然挿入された指がちゅぷ、と音を立ててナカを掻き回し始めた。
「とろとろになってんぞ」
言われるまでもない。ロウのそれを舐めているうちにひどく興奮してきてしまったのだ。
「やあッ…あんッ、あ、あッ…!」
内壁を擦られると腰が揺れる。淫猥な声を上げてはしたなく喘いでも、ロウは蔑むどころか喜んでくれる。
「ほら、ちゃんと舐めろよ。手ぇ止まってんぞ」
尻を突き出す格好になりながらも必死で陰茎を咥えるとまた興奮で愛液が溢れるのが分かった。
「ああッ」
突如ぬるりと押し入ってきたのはロウの舌だ。指でそこを押し広げ、緩んだ秘部を音を立てて舐めしゃぶっている。
「やっ、やだぁ…ッ、きたないよおっ」
「お前が俺の舐め始めたんだろ」
俺も応えないとな、とロウは再び筋に舌を這わせた。かかる吐息に大腿を震わせ、敏感なところを温いもので弄られる。
次第にぼやけていく思考にすっかり本来の目的を忘れ、リンウェルは秘部の快感に酔いしれてしまっていた。
「気持ちよさそうだな」
「あッ、いい…きもち、いっ…!」
途切れ途切れにそう答え、荒くなった呼吸で肩を上下させた。
「じゃあこっちは?」
そう言ってロウがそっと触れたのはすっかり膨れ上がった肉芽で、些細な刺激でさえ全身に走る電流となる。
「ほら、好きだろ。クリトリス」
「やあッ、だめッ、だめだよぉッ」
そうは言うものの、本当は触れてほしくてたまらない。触れてもらえないなら自分で触ってしまいそうな勢いだ。
ロウがそんなリンウェルの様子を見逃すはずもなく、丁寧に、それでいてやや乱暴に肉芽を摘んだ。
「あああぁぁーーッ!!」
そのままぐりぐりと押しつぶされ、腰から伝わっていく刺激は末端まで押し寄せる快感の波だ。
「やあッ、だめ、おかしくなっちゃう!」
頭も、ナカも、狂ってしまう。ロウ無しでは生きていけない体になってしまう。きっとそれでもいいと、ロウは笑うのだろうが。
いつのまにか達した体は既に怠さに包まれていた。ナカがびくびくと収縮していて、下半身の感覚も鈍くなっている。
「俺まだ挿入れてねえからな」
反射的に逃れようとした腰をがっちりとホールドされてしまえば逃げ場はない。
「や、やだ…わたしイったばかりで…」
「ちときついかもな」
まあ頑張れよ、と言う声と同時に一気に最奥まで貫かれると上がった声は声にならなかった。
後ろから突かれる形で激しく何度も腰が打ち付けられる。自分すら支えられない膝はがくがくと震え、ベッドの上でくずおれていた。
捲られるようにして脱がされた白のセーターを右手に引っ掛けたまま、リンウェルはただ強すぎる快感に啼いた。
被さってきたロウが胸の突起を手慰みに嬲る。背中に感じるロウの熱と、行為の最中のぞんざいな愛撫がまたいちだんとリンウェルの胸をときめかせた。
「こっちがいい」
最後は正常位でと、リンウェルは強請った。
キスがしたいし、ロウの顔も見たい。肌が合わさる面積も一番大きい気がする。
膝の間にロウを受け入れながら、リンウェルはその背中に腕を回した。
次いで降ってくるキスは優しいのにどこか荒々しい。そんなロウのキスが好きで、リンウェル何度も何度も続きを求めた。
私ほどロウに愛されている人はいない。
ロウは激しくも優しくも自分を求めてくれて、愛してくれる。きっと今夜はそれを確かめたかったのだろう。
ロウの大きな腕の中でようやくリンウェルは満ち足りた。それでも飽きることないキスの応酬には、心ゆくまで付き合ってもらった。
終わり