俺が一体何をしたと言うのだろう。
部屋に戻ってくるなり鬼の形相をしたリンウェルが仁王立ちで待っていたと思うと、今はその場に正座させられている。足の下の木の板が痛い、冗談じゃなくて。
「ロウ、これ何?」
リンウェルがそう言って突きつけてきたのは薄い雑誌。いや、写真集だ。
「『レナ人だョ!巨乳集合!』?」
あの、タイトル読み上げるのやめて。恥ずかしいです。
先週パドヴォが「へへっ!(良いものやるよ!レナ人の友達から貰ったんだ!)」とロウにこれを渡してきた。表紙からしてそういう本だとはわかっていたが、これも男の性って奴なのか何の躊躇もなくそれを懐に入れるとロウはパドヴォとグータッチを交わしたのだった。
中身も表紙に劣らずで本当に世話になった。実用性が高い。写真とかいうレナの技術が使われていて、まるでそこに人がそのまま映ったような本なのだ。
開いた瞬間に呼吸が荒くなったのを覚えている。こんなものが世の中にはあったのか、流石世界だ、まだまだ知らないことが溢れているなと思った時には一発目が発射されていた。
このままでは自分の貯えがなくなってしまうなとそこで本は閉じたのだが、まさか全部読み終える前にリンウェルに見つかってしまうとは思わなかった。
「何これ、何なの!? なんでこんな本持ってるの!?」
入手経路を問われているのかそれとも入手目的の方か。あるいはどちらもか。
「パドヴォから貰って、一人で読みました」
「そんなこと聞いてない!」
どちらも違ったらしい。じゃあなんだというのか。
「私がいるのになんでこんな本持ってるの!」
なるほどそっちか、と言いかけて感じた殺気にロウは閉口する。
なんでと言われたところで答えはいくつか思い浮かぶ。若いからとか、興味があったからとか。性癖は別腹だとか言われてもリンウェルには理解できないだろう。
ただリンウェルは最高にかわいいし最高の彼女だと思っている。それだけは唯一絶対不変の事実だ。
そう言ってみたところで「なおさらわかんないよ!」とリンウェルを怒らせてしまうだけなのだと思うとロウは次の言葉を紡げないでいる。
「えーと……」
「そうだよね、私のは小さいもんね!」
「そういうわけじゃ……」
ロウが顔を上げると、リンウェルの手が動くのが見えた。
これは裁きが降ってくるやつだと反射的にロウは目を閉じるが、意外にも衝撃はやってこない。代わりに自分の手が取られたと思うとなんだか柔らかくて好ましい感触が手のひらに伝わる。
おそるおそる目を開けるとリンウェルがすぐそばにいて、顔を少し赤くしながらロウの手を自らの胸へと押し当てていた。
「り、リンウェルさん……?」
「ロウが大きくしてよ!」
潤んだ目は怒りからか羞恥からか。どっちにしたってこんなことをされて喜ばない男などいない。
ロウは早速リンウェルを横抱きにすると、そのままベッドへと直行する。リンウェルを下ろすと靴も上衣も脱ぎ捨てて獲物を捕らえるようにリンウェルに跨った。
大きくしてほしいというからには揉んで揉んで揉むしかない。ぽいぽいっと服を脱がして素肌を露にさせる。
「おい、隠すなよ」
「だって……」
恥ずかしいもん、と顔を逸らすリンウェルだが、注文を付けたのはそっちだ。その両手を払いのけてベッドに縫い留めると、小振りだが形のいいそれがロウの目の前に現れる。
「あ、あまり見ないでよ!」
「いつも見てるだろ。それに見ないと揉めないぜ」
そんな少しの会話の間にピンク色の突起が主張を始めていた。試しに息をふっと吹きかけてみるとリンウェルの体が跳ねる。
「やっ……」
「やっぱ可愛いわお前……」
もっと焦らして反応を眺めていたかったがその可愛さに免じてお望みどおりにしてやることにした。
両手を胸に這わせ指に力を入れる。手のひらの中心に突起が当たるのが分かった。
「んん……あぁ…ぁっ」
リズムよく揉みしだいてやるとリンウェルの腰が揺れる。突起へのこれといった刺激がない分、物足りないのかもしれない。
下から上へと持ち上げるようにしてみたり、中心に寄せるようにしてみたりロウは色々試すがどうもやりづらい。時折リンウェルが「痛い」と言うのはきっと体重をかけすぎているからなのだろう。
ならば、とロウはリンウェルの上体を起こし自分はその背後に回る。後ろから腕を回す形を取れば先ほどよりもずっとやりやすい。
「こっちの方がいいだろ?」
「うん……」
リンウェルの背中がロウにぴったりとくっついて人肌が心地よい。おまけに手にはリンウェルの可愛い胸の感触がある。
これを最高と言わずしてなんと呼ぶのだろうと思っていたら、つい指がリンウェルの敏感な突起を摘まんでしまった。
「や…ぁっ!」
「お、悪い悪い。でもちゃんと気持ちよくないと大きくならないって知ってたか?」
「そうなの……?」
当然、今適当にロウが作った説だったが、リンウェルはどうやら信じてしまったようだ。
「じゃあ、もっと気持ちよくして……?」
そうこなくちゃな、とロウは心の中でガッツポーズをして遠慮なく突起を弄り始める。勿論乳房を揉むことも忘れずに。
「あぁ…っあ…あぁっ!」
指先で突起が刺激されるたびにリンウェルが身体を捩るものだから擦れたロウのそれがむくむくと首をもたげてくる。いや正直もう結構はじめからキてはいたけども。
「挿入れてもいいか?」
一応お伺いを立てるとリンウェルはコクコクと何度か頷いてどこから用意したのか避妊具を持ってきた。ロウがそれを付ける間にリンウェルは下を脱ぎ、こちらを向いてロウに跨る。所謂対面座位の格好になるがリンウェルは慣れない体位にゆっくりと腰を下ろしていく。
「自分でできるか?」
「うん……」
先端がリンウェルの体にちょんちょんと触れるがどうもなかなかお目当ての場所に当たらないようだ。
「ほら、ここだって」
ロウが自身を支えて僅かに腰を浮かせれば、濡れたリンウェルの中に辿り着く。ちょうどリンウェルが腰を落としたタイミングと重なって一番太いところが一気に挿しこまれた。
「ひっ…ぅう…あぁ!」
たまらず上に逃げるリンウェルの腰を掴んでロウはそうさせまいとする。
「ほら逃げるな。気持ちよくならねえと」
「あ…あぁっあぁ…やぁああっ」
リンウェルが腰を浮かすたびに目の前で乳房が揺れる。思わずそれに吸いつくとリンウェルの背中が反るのが分かった。迸る快感からそうなっているのだろうが、自分に胸を押し付けているようにも思えてロウは気分を良くする。唾液でぬらぬらと輝く突起はひどくいやらしい。
リンウェルは自分の胸を小さいとかなんだとか言うがロウはそれを今日まで気にしたこともなかった。形はもちろん感度もいいし言うことなしだ。
大きければそれに越したことはないのかもしれないが、ロウは今のままだって充分好きだ。それをそのまま言ってやればいいのだが、「ロウが大きくしてよ」なんて役得を逃すわけにもいかなかった。
それもこれもリンウェルが好きだからこそなんだけどなぁと思いながらロウはリンウェルにキスをする。それを合図にしてリンウェルの上に覆いかぶさるとラストスパートを掛けたのだった。
良かったかとロウが問えばリンウェルは大人しく頷くのだが、まだその表情は納得がいかないようだった。
「悪かったよ。もう捨てっから」
「別にそこまでしなくてもいいけど」
「の割りに不機嫌そうじゃねえか」
頬を膨らませる、とまではいかないがリンウェルの口は一文字に結ばれたままだ。
「だって、私じゃ物足りないんでしょ?」
「だから違うんだって。それとこれとは話がちがうっつーか」
「わかんない」
「だよなー……」
自分だって逆の立場でそう言われても訳が分からないと思う。リンウェルが理解できないというのが理解できる。
「でも、ロウは私が好き?」
「あったりまえだろ!」
リンウェルの身体を抱き寄せればふわりといい香りがする。柔らかい肌の感触は他にたとえようがないくらいだ。
「ロウは街中でも胸の大きい人ばっか見てるし」
ため息交じりにリンウェルが言う。それについてはロウの自覚はあったが、自然とそこに目がいってしまうのだ、仕方ない。
「だから揉んで大きくしてもらおうかなって」
「どこで覚えたんだよそんなの」
「図書の間」
「お前もエロ本読んでるじゃん!」
「私のは勉強!」
それが勉強というなら写真集だって教科書みたいなものだ。主にこれからリンウェルの体で実践を学ぶための。
そう言ったらきっと本当に裁きが下るだろうなと思ってロウは口をつぐんだ。
ついでに「胸は揉んだら大きくなる」説は迷信だということも内緒にしておこうと思った。
おわり