夏に汗だくエッチをするロウリンの話。イチャラブ。

☆夏を迎えるなら君と

照り付ける夏の日差しは強いといってもその度合いをはるかに超えていて、この街ではもう何日も猛暑日が続いている。今日はその気温も最高値となりそうで、流石に身の危険を感じたロウは外出の予定を急遽変更して俺の部屋に来ないかとリンウェルにメッセージを送った。
「それなのにこの温度?」
午後を過ぎて到着したリンウェルが眉をひそめたのは当然で、ロウの部屋に取り付けられた旧式のクーラーはごうごうと大きい音を立ててはいるもののその働きぶりは外気温と比べれば些かマシといった程度に過ぎなかった。それでもこの時間帯を乗り越えさえすればというわずかな期待を込めてリンウェルがコンビニで買ってきたアイスを差し出せば、ロウは珍しくそれに飛びついたのだった。
「やけに荷物多いな」
「今日泊まろうと思って。ダメだった?」
願ってもないことにロウは首をぶんぶんと勢いよく横に振る。
迎えたばかりの夏休みをこんな暑苦しい部屋で過ごすこと自体申し訳が立たないというのに、泊まっていけよなどとロウの口からはとても言い出せなかったのだ。
「ご飯作ってあげるから、夕方なったら買出しに行こ?」
極上の幸せとはまさにこのことで愛する彼女と過ごせる上に手作りご飯まで食べられるなんて自分は一体前世でどんな徳を積んだのだろう。
ロウが吹き出る汗をタオルで拭うふりをしてにやけた口元を誤魔化していると、リンウェルは鞄から携帯ゲーム機を取り出した。友人たちとプレイしているロウを見たリンウェルが「私も一緒にやりたい」とハードごと購入してきたのがついこないだのことだ。アクションゲームゆえにリンウェルには合わないのではと思ったのはロウの杞憂で、思いの外ハマったリンウェルはことあるごとに「ゲームしようよ!」とロウと通信プレイを楽しんでいる。
リンウェルが部屋デートをあっさり許可したのだってこれがあるからだろう。でなければ狭いこのワンルームでできることなんて一緒に映画を観るとか動画を見ることくらいしか思いつかない。
「今日は欲しい素材があるんだー」
「じゃあ先にクエスト貼っていいぜ」
できるだけ退屈はさせたくないが、ロウはこうしてリンウェルが楽しそうなら何でもいいかとも思える。それくらいリンウェルに惚れてしまっていて、きっとこれからもそうなのだろう。

ゲームをして数時間が経っても気温はなかなか下がらず相変わらず肌には汗が滲むばかりだった。
その不快感に嫌気が差したのかリンウェルはシャワーを浴びたいと言い出した。
「体流してくるだけだから」
「おい、タオルは?」
「あっ借りるね。ありがと!」
ロウに手渡されたタオルと鞄からいくつかの袋を手早く取り出してリンウェルは浴室へと消えていった。
一人残されたロウはぬるい風を送る扇風機の前でその髪をなびかせながらぼうっと考える。
(確かに、別にどこかに遊びに行くというわけでないにしろこのまま外に出るのもためらわれるし、自分も軽くシャワーを浴びた方がいいだろうか。汗っかきなのは自覚しているし、どっちにしろ寝る前にももう一回浴びることにはなりそうだが。
そういえば今夜は何を作ってくれるのだろう。リクエストをすればリンウェルは聞いてくれそうだが、ハンバーグがいいだろうか。夏バテ防止のカレーもアリだ。最近はそうめんばかり食べてしまっているし、リンウェルが作るなら野菜をたくさん入れてもらって――)
ロウがそこまで考えたところで浴室のドアが開く。
「あーさっぱりした」
タオルありがと、と言いながらリンウェルが部屋へと戻ってくる。時間にしてほんの数分。髪の毛が濡れていないところを見ると本当に体を流してきただけのようだ。
それにしても、その恰好は。
リンウェルは先ほどまでの私服とは違う、シンプルな黒のTシャツに薄めの短パンを履いていて、ひらひらとした裾から覗く太腿に思わず目が行ってしまう。
リンウェルは先ほど同様携帯ゲーム機を起動させてベッドへと寝転がると、その脚を無邪気にばたつかせるものだからその隙間からピンク色の下着が見えたり隠れたりしてロウの心をざわつかせた。
「もう一回さっきのクエスト行かない?」
「あ、ああ……」
見えてるんだよ!と言いたい気持ちを抑えてロウもゲーム機の画面に視線を落とすが、視界の端でチラつくそれが気になって仕方ない。風に乗って流れてくるボディソープの匂いがまたロウの心臓をぎゅっと握りしめてくる。
「ほら、早くクエスト受注して!」
「待てって、まだアイテム整理してねえから」
そうやって急かす間もリンウェルはごろごろとベッドの上で動き回り、ロウが必死でかき集めた集中力を削いでしまう。
捲れたTシャツからも無防備な腹や腰を覗かせるものだから、しびれを切らしたロウがとうとう動いた。

ロウは立ち上がってリンウェルの隣に同じくうつ伏せに寝そべると、こちらを向いたリンウェルにそっとキスをする。
「ど、どうしたの?」
「そんな恰好で、お前が悪い」
リンウェルに跨るとロウは、先ほどは打って変わって強いキスを何度も浴びせる。ゲーム機から離れた手はTシャツの上から柔らかな膨らみをとらえ、その感触を確かめるようにしてロウは何度も下から揉みしだく。
「んぅ……っ……ふ…ぁ…っ」
いつの間にか深く混ざり合っていた咥内からは艶のある吐息が零れていて、ロウの中でも何かが込み上げてくるような感覚がして暑さではない熱を感じた。
既に硬くなり始めていたそれがリンウェルの太腿に触れると反応したのはリンウェルの方で、不意に離れたその口元が緩い弧を描いた。
「……その気になってくれた?」
挑発するような言葉は全部が全部リンウェルの手のひらの上だったことを示していて、その衝撃にロウの頭の中はぐらついた。
「……わざとかよ」
肯定の代わりにリンウェルから小さくキスを貰うと、ロウはその首筋に顔を埋めて悪態をつく。
「シたいならそう言えよ」
「だって……恥ずかしいし」
下着を見せつけるのは恥ずかしくないのかと言いたかったが、そんな単純な餌にホイホイとかかったのは自分の方だ。かといってその餌は甘美なだけでこれといったデメリットもないのでただ美味しくいただくだけなのだが。
浮かせた背中から下着を外してやれば突起がTシャツ越しにでもわかる。左手でそれを弄りながら右手を下半身の方へと伸ばすとそこはすでにぐっしょりと濡れてしまっている。
「脱がすぞ」
「ん……」
全部取り払ってしまえばリンウェルのそこを隠すものはもう何もない。指を挿し入れるとそこは何の抵抗もなくそれを受け入れた。
ついさっき汗を流してきたばかりなのに今は体液に塗れてしまったリンウェルを見てロウはふと思い出す。そういえば行為の前は体をきれいにしたいとリンウェルはシャワーや風呂を欠かさなかった。わざわざ「暑ーい!」なんて言って浴室に駆け込んだのもそういう意図があったとしたら。
可愛いやつだな、とロウは笑うとその脚を開かせリンウェルの秘部に舌を這わせる。
「えっ……ちょ、ちょっと……っ!」
空いた指で肉芽を摘まむときゅうと中が収縮するのが分かった。
「やだ…っ、きたないからぁ……っ」
「そのためにシャワー浴びたんだろ?」
ちがう、と言いたいリンウェルの声は嬌声に変わってしまいなかなかロウには届かない。
「やっ……! イっちゃ……う……!」
リンウェルの匂いを今までで一番近く感じながらロウが音を立ててそこを強く吸い上げるとリンウェルは体を震わせて絶頂を迎えた。
肩を上下させて呼吸するリンウェルを眺めながら、ロウは今度は自分の番だと避妊具を装着する。
「挿入れるぞ」
蕩けた顔でリンウェルが頷くのを確認すると、ロウは細い腰を掴んで一気に挿入する。達したばかりのそこはリンウェルの意思とは関係なくロウを締め付けてくるが、背中に回ったリンウェルの腕がロウを離そうとしない。腰を引くにも引けなくて奥をガンガンと責めてやればリンウェルが仰け反るのがわかってロウはそれに専念した。
触れ合った皮膚からお互いの体液が溶け合っている。どこに手をやってもぬるつくその感覚は普段ならきっと不快に思うに違いない。でも今この瞬間だけはそれも心地良い。繋がった部分よりもさらに深く甘く一つになれていると感じる。
最後のスパートをかけたロウが避妊具に熱を吐き出すと、リンウェルがキスを強請った。
既に外は夕暮れ時を迎えていたがもうしばらく外出はできそうにない。夕飯は外食で帰りに朝食の材料を買うことにして、今はもう少しこの腕でリンウェルを抱きしめていたかった。
今日何度目になるかわからないキスをしながら二人はベッドの上で笑い合う。最高の夏休みの幕開けだった。

おわり