小さく開け放った窓から、ふんわり甘い風が入ってくる。
通りにはすがすがしい笑顔を浮かべたたくさんの人たち。子供たちが持っているバルーンは、つい先日から街の入り口で配られるようになったものだ。
通りの奥からは賑やかな市場の声が届いていた。いつも花が溢れるこの道に最近では色とりどりのガーランドが加わって、もうすぐ始まるお祭りの足音が今にも聞こえてくるようだ。
それなのに私ときたら、今朝から自宅の部屋にこもりっきり。長いこと机に向かって、うんうんと頭をいたく悩ませ続けている。
開いていたのは、1冊の本だった。それは歴史書でも古文書でもなく、まだ表紙の真新しい、装丁も最近の流行のものだ。
それを何度も何度もめくっては、ため息を吐いた。どれがいいだろう。これ? それともこれ?
とうとう決断を下せないまま最後のページへと辿り着き、諦めたように表紙を閉じる。これではいけないと再び本を開いて同じ事を繰り返すこと数回。気が付けば時計の針はぐるぐるともう何周もしてしまっていた。
ああもう、どうしよう。もうあまり時間はないのに。
焦る気持ちが指を動かすけれど、心は一向に定まらないまま。ゆらゆら、それこそ植木にぶら下がったオーナメントのように揺れていた。
こんなはずじゃなかったんだけどな。むくれた自分が映るガラス窓の向こうでは、ハートの形をした花の飾りが街を彩っていた。
◇
毎年、この時期になると街はにわかに騒がしくなる。道行く人々はどこかそわそわとして、ときめく気持ちを隠せないでいるような、そんな雰囲気が漂う。
それはきっと、あのイベントが近づいているから。『愛の感謝祭』と称されたそれが、もうひと月後に迫っている。
きっかけは数年前、ヴィスキントで「大切な人に日頃の感謝を伝えよう」というテーマの催しが開かれたことだった。発案はケーキ屋の奥さんで、子供からお年寄りまでみんなが楽しめるお祭りにしようと企画を練ったらしい。はじめの段階では小規模だったそれも、話が広まると協力したいという人が次々に現れた。最終的には街の人だけでなく外から訪れる旅商人までもが加わることになり、当時としても類を見ない、それは賑やかな催しとなったのだった。
お祭りでは参加者にはチョコレートが配られた。それを贈ることで大切な人に感謝を伝えようというものだ。これがなかなかに評判が良く、街の雰囲気が良くなる、毎年開催してほしいと声が上がった。経済効果としても上々で、この話はどう地域を盛り上げようか頭を悩ませている他領の人の耳にも届いて、今ではこの時期になると各地でこぞって感謝祭が開かれるようになった。はじめはほんのささやかな地域のお祭りだったものが、あっという間に世界規模のイベントとなったのだ。
まさかケーキ屋の奥さんも、こんなことになるとは思わなかっただろうなあ。飾り付けが始まった街の様子を見て、私はそんなふうに思っていた。自分が考えたお祭りが世界に広がっていったら、そしてそれを実際に目の当たりにしたら、どんな気持ちになるんだろう。嬉しい半面、どきどきしたりするのかな。発案者として有名になって、握手なんか求められちゃったりして。私が想像する一方、当の本人はといえば、お祭りの知名度と比例するお店の売り上げを純粋に喜んでいるようだった。
あれから数年。見た目や規模こそすっかり変化した感謝祭だけれど、その根本は変わっていない。「大切な人に日頃の感謝を伝えよう」のテーマはそのまま、相手にチョコレートを渡すというのも今やすっかり定番化していた。
変化があったとすれば、そのチョコレートを手作りする人が増えたということだろうか。材料も手に入れやすく、自宅で作れるものも多いということで、感謝祭に参加する人、とりわけ女子の中で手作りチョコレートは大流行した。
昨年は私もその手作りチョコレートとやらに初挑戦した一人だった。シオンの家に集まり、キサラ大先生のご指導の元、それは可愛らしいチョコレートを作ることに成功した。それらはきれいに包んで男子へ、私たち女子はキサラが焼いてくれた濃厚チョコレートケーキを心ゆくまで楽しんだのだった。
今年もその季節がやって来る。今年はみんなに何を贈ろうかなあ。前回と同じで、みんなで集まって手作りかな。
そう思いかけて、首を振った。最近の宮殿を駆け回るキサラは、それはもう心配なほどに忙しそうなのだ。
「街が発展するのは喜ばしいんだが、祭りの規模が大きくなると警備も大変でな……」
今は人手不足をどう解決しようか頭を悩ませているのだと、キサラは疲れ切った笑顔で言ったのだった。
だったら今年は1人で作ろうかな? でも、お店の贈答用のチョコレートも可愛いし……。きらきらの宝石がそのまま詰まったようなそれを思い浮かべてはうっとりとした。あれならみんなも喜んでくれるに違いないけれど……。
どうせ贈るなら喜んでもらいたいし、美味しいと言ってもらいたい。でも手作りも気持ちがこもっているような気がして、どうにも捨てがたい。
あれこれ迷っている時だ。ロウが仕事のついでだと言って家を訪ねてきたことがあった。私は保存庫の中身の減り具合を見て、ここぞとばかりにロウを連れ出した。
市場に向かう途中、本屋に立ち寄った。そろそろ新しい本が並ぶ頃だと思ったのだ。
本屋にはお目当ての歴史書やら古文書のほかに、まだ表紙の新しい見慣れない本も並んでいた。「感謝祭のレシピ集」と題されたそれは、もうすぐに迫る催しに合わせて出版されたもののようだ。
「へえ、こんなのもあるんだな」
ロウが本を手に取り、ぱらぱらとページをめくっていく。中身はどうやらほとんどがチョコレート菓子のレシピのようだった。
必要な材料のほかに詳しい調理工程も記載されているそれを、私もロウと同様「そんなものもあるんだな」としか思っていなかった。手作りのチョコレートは女子の中では定番だし、需要もそれなりにありそうだな、売れ行きも悪くないんじゃないかな、などとそんなことを考えていた。
その時、ロウが何かを思い出したように言った。
「そういや、カラグリアの奴らも何か作るって言ってたな」
「そうなの?」
問いかけた私に、ロウはおう、と頷いた。
「ティルザが女子集めてどうのって言ってたんだよ。材料も揃ったとかなんとか」
詳しいことは知らねえけど、とロウは肩をすくめた。
「『仕事頑張ったらロウにもあげるから』って、何人かに言われてよ。俺はいつでも頑張ってるっての」
肩を揺らしながら話すロウに、私は「そうなんだ」と声を振り絞った。できるだけ平静を装いながら。
ロウにチョコレートを渡すような女の子がいる。自分以外に。その事実に私は少なからず衝撃を覚えていた。
別に、ロウにそういう知り合いがいたっておかしいことじゃない。〈紅の鴉〉にはティルザ以外の女の子だって所属しているし、それでなくとも仕事で知り合った人もいるだろう。その中で気軽に話をする子がいたってそれはごく自然なことで、仲が良いなら感謝祭のチョコレートをやり取りすることもあるかもしれない。私がアルフェンやテュオハリムに渡すように。
きっとそうだ。深い意味はない。言い聞かせながら、次に頭の中に浮かんできたのは、もっと別の懸念点だった。
ロウが私以外の女子からチョコレートを貰ったらどうなるか。――もしかして、比較されたりしないよね?
昨年はキサラの監督の元作り上げたものだったので、味に心配はなかった。見た目も初めてにしてはなかなかきれいにできて、胸を張って3人に渡すことができた。
ただ今年はきっとそうはいかない。キサラは忙しくて会えないし、ひとりきりで上手く仕上げる自信もない。味も見た目もひどい出来のものをロウに笑われた挙句、「他の女子からもらったやつの方が美味かった」などと言われようものならたまったものではない。
それでいて市販品を渡そうという気にもなれなかったのは、単に私の負けず嫌いからくるものだった。贈ったものが印象に残らないのは、不味いと言われるより、見た目が悪いと笑われるより、いちばん悔しいことだった。
でも、じゃあどうしたら……。
私は悩んだ末、ロウと別れた後でまたこっそり本屋を訪ねた。手に取ったのは分厚い歴史書ではなく、真新しい表紙の例のレシピ本だった。
きっとこの中になら、私にも作れるものがあるに違いない。まるでお店で売っている商品のように仕上げて、ロウを驚かせてやるんだから。――期待していたのに、そう上手く事は運ばないものだ。
確かに私にも作れそうなレシピはあったけれど、それがロウに喜ばれそうかというと少し違う気がした。ロウはどちらかといえば見た目のインパクトにこだわりそうな一方、一目見てあっと言わせられるようなレシピは往々にして難易度の高いものだった。
私にはそんな技術もなければ知恵もない。でも簡単に諦めることもできない。
その堂々巡りが今日一日の結果で、窓の外で日が徐々に暮れるのを感じながら、思わず机に突っ伏した。
決まらない、決められない。私ってこんな優柔不断だった? 心の中でため息を吐きながら、指先で本の表紙を撫でる。
いや、違う。きっとそうじゃない。私がこんなふうに迷ってばかりいるのは――。
浮かんできた誰かの顔と思い当たる理由に、私は強く目を閉じて知らないふりを決め込んだ。
数日後、私はいつものように図書の間に出かけた。宮殿から出たところで声を掛けてきたのは、キサラだった。
「リンウェル、ちょっといいか」
やや焦った様子のキサラに、私は「どうしたの?」と訊ねた。
「急な話なんだが、頼みがあるんだ。今からシスロデンに向かってくれないか」
「シスロデン? どうして?」
「実は……」と、キサラは声を落とした。「先方に送るはずの書簡を手違いで入れ忘れてしまったんだ。交易品と一緒に送る予定だったんだが」
キサラの手にはしっかりと封のされた〈銀の剣〉宛の手紙が握られていた。どうやら荷馬車に荷物と積み込むはずが、見事に書簡だけが取り残されてしまったらしい。その荷馬車も午前にヴィスキントを発ったので、早馬で追いかけることも難しくなってしまった。
「部下に向かわせようとしたんだが、皆出払ってしまっていてな。感謝祭もあって、人手が足りていないんだ」
すっかり疲れ切った様子でキサラは言った。
「完全に我々のミスだが、できる限りのことはしたい。書簡を持って、シスロデンに行ってはくれないだろうか」
深刻そうにキサラは言ったが、私は内心ほっとしていた。どれだけ危機的状況なのかと思ったら、そんなことか。
「そんなの、お安い御用だよ」
「本当か!」
「うん。私なら〈銀の剣〉にある程度顔も利くしね。行って、手紙を渡すだけでいいんでしょ?」
ああ、とキサラは大きく頷き、心からほっとしたような顔を見せた。
出発は私の準備が整い次第ということになった。キサラは私に手紙を手渡すと、
「本当にありがとう、リンウェル。今回の埋め合わせは必ずしよう」と言った。
「別にいいのに、そんなの。でもせっかくだし、ありがたく頂戴しようかな」
「ああ。何でも言ってくれ。私にできることなら何だって力になろう」
「そう言われるとますます迷っちゃうな。道中でのんびり考えることにするね」
私はそう言ってキサラと別れると、家に戻って外出の準備を始めたのだった。
翌朝一番の馬車に乗って、私はシスロデンへと向かった。街道を越えて山道に入ったところでぐんと気温が下がる。持ってきたマフラーを鞄から取り出そうとして、その中で真っ白な何かが小さく震えるのがわかった。
「――フル!」
「わっ、フルル。ここにいたの?」
「フゥル!」
真っ白なマフラーに真っ白な体をすっぽり埋めて、フルルが嬉しそうに目を細める。さっきから姿が見えないなと思っていたら、こんなところで暖を取っていたらしい。てっきり風よけのために座席の下にでも隠れているのかと思い込んでいた。
「そういえば、フルルはこういうもこもこした生地が好きなんだもんね」
私が問いかけると、フルルは気持ち良さそうな声で「フルゥル!」と鳴いた。フルルはそのふわふわな白い羽を自前で持っている割に、あたたかいものが好きだ。ヴィスキントでも冷える夜には私のセーターを引っ張り出してきて器用に身体に巻き付けているのを見るし、朝方もこれまた私に負けないくらい長いこと毛布に包まっている。一見暑そうにも思えるけれど、見た目と居心地良く感じる場所にそれほど相関性はないらしい。
とはいえこれは私のマフラーだ。これがないと、いくら雪国出身の私とはいえみるみる凍えてしまう。
哀しそうな目をするフルルを振り切って、私はマフラーを自分の首に巻き付けた。追い出されたフルルは「フル……」とこれまた切ない声を出していたが、そのふわふわの生地にはまだフルルの分けた温もりが残っていた。
シスロデンに着くと、私は足早に中央の広場に向かった。レナの支配時代、領将の居城となっていた旧獄塔は、今では公共施設となって、主に〈銀の剣〉の活動拠点となっていた。
中に入ってメンバーに声を掛け、奥の部屋に通してもらう。そこで私を待っていたのは、今現在〈銀の剣〉を取りまとめているブレゴンだった。
「やあ、リンウェル、久しぶり。元気そうだな」
「ブレゴンも。実は、今日はメナンシアの書簡を預かってて……」
事情を説明すると、ブレゴンはすぐに話を理解したようだった。
「なるほどな。書簡が届いていないという話は聞いていたが、まさかリンウェルが代理だったとは」
「感謝祭であちこち慌ただしいみたいで。部外者なのにごめんね」
私の言葉に「いやいや」とブレゴンは首を振った。「わざわざすまなかったな。だが助かった。ありがとう」
ブレゴンは、返信には少し時間がかかると言っていた。今年はシスロディアでも感謝祭の催しを開くらしく、現在はその準備に追われているのだそうだ。
「大体2週間くらいか。その頃を目途にこちらから書簡を送るか、あるいは使者を送ってもらうことになるだろう」
私はそのことをキサラに伝えておくと返事をして、建物を出た。大きな扉の前で、一仕事やり遂げたように大きく伸びをする。とはいえ私は忘れ物の手紙を渡しただけなんだけど。
お腹も空いてきたので、どこかで何か食べようと思った時だった。広場の向こうから歩いてきた見覚えのある人物に、私は思わず声を上げた。
「ロウ!?」
ロウもこちらに気が付いて、すぐさま手を上げる。
「どうしたの? なんでここに?」
「なんでって、仕事だよ。これを〈銀の剣〉に届けてくれってさ」
ロウのもう片方の手にはしっかりと封のされた手紙が握られていた。どうやらカラグリアからも、私が届けたような内容の書簡が送られたらしい。
「なるほど。じゃあそっちも荷物に入れ忘れたの?」
「荷物? 何のことだ?」
私は咄嗟に、ううん、と首を振った。〈紅の鴉〉は単に距離が近いという理由でロウをシスロディアに寄越したようだった。
「それにしても、お前がシスロディアに来るなんて珍しいな。いつもは遺跡以外、ほとんど外に出ねえのに」
「キサラ直々のお願いだし、そうじゃなくてもそれくらいするよ。いつもは機会がないだけ」
そんなふうに言いつつ、頭の片隅では今朝机の上に置いてきたダナの古文書がちらちら見え隠れしている。ああ、早く帰って本が読みたい。こんな寒さに凍えない場所で、温かいお茶を飲みながら読書に耽っていたい。
同時に脳裏に過ったのは、古文書の隣に置いてある例のレシピ本だった。そういえば、とロウの顔を見て思い出す。感謝祭について、まだ何も決められていないのだった。
あれから何度も本を開いては考え込んでみたけれど、やっぱりどれもいまいちピンと来ていない。もはや諦めて市販のものを買おうと思ったこともあったが、街の商店で売られていた宝石のごときチョコレートは既に完売してしまっていた。
ケーキ屋のチョコレートケーキは最終手段として、ほかに手立ては見つからないまま。ああもう、ある日朝起きて突然料理の腕が上がってたりしないかな。あるいはもっと良い選択肢が見つかるとか……。
「どうした? 何か考え事か?」
思わずついて出たため息を訝しく思ったのか、ロウがこちらを覗き込んでくる。
「なんでもない!」と手と首を大きく振って否定すると同時に、辺りに響き渡ったのは私のお腹の虫だった。目と目が合った瞬間、ロウがぷっと吹き出して言う。
「ちょうどいいや。これ、さっさと渡してくるからよ。この後一緒に飯でも行こうぜ」
私は気恥ずかしさに口を曲げつつ、ロウの提案に黙って頷いた。
ロウとは街の食堂でご飯を食べた。温かいスープ付きのオムライスは身も心もほっとする味で、なんとなく懐かしい気持ちになった。もしかしたら味付けのせいかな。どんな人が作っているんだろう、などと考えている私の隣で、ロウはといえばお肉のごろごろ入った真っ赤なカレーに火を噴いていた。
店を出ると、先ほどよりも冷たい風が吹くようになっていた。雪混じりのそれに自然と身が縮こまる。
「うへえ、さびいー」
大きなくしゃみをして、ロウが鼻をすすった。その先端は真っ赤に染まっていて、まるで童謡に出てくるトナカイのようだ。
そこでひとつ気付いたことがあった。真っ白なマフラーに顔を埋める私の一方、ロウの首元には何も巻かれていない。厚手のコートは羽織っていても、顔周りの寒さをしのぐものは何も身に着けていなかった。
「ねえ、寒くないの?」
気になって訊ねてみると、ロウはとても不思議そうな顔をした。
「さみいよ。さむいに決まってんだろ」
そうだよね、と思いつつ、「じゃあなんでマフラーも手袋も着けてないの?」
「なんでって、持ってねえし。普段使わねえから、買おうとも思わないんだよな」
シスロディア来るたび後悔するけどな、と言って、ロウはまたひとつくしゃみをした。風通しの良すぎる喉元から藤色の道着が覗いていた。
その時、突如私の脳内に雷が走ったようにアイデアが湧いて出た。――そうだ、これだ! 思わず声に出しかけたそれを、ぐっと押し堪える。
その反動か、今度は口元が緩んでくるのがわかった。マフラーにいっそう顔を押し込めた私に、ロウが「寒いのか?」と訊ねてきた。
「ううん、大丈夫」
と首を振りながら、にやけそうな頬をなんとか抑えた。
ああ、早く帰りたい。先ほどとはまったく違う理由で、私はメナンシアに早く戻りたいと願ったのだった。
シスロディアから戻ると私は早速行動を開始した。向かったのは街の手芸屋さんで、服や布生地を繕う時に材料を買いに訪れるお店だった。
私があの時思いついたアイデア。それは、ロウに手編みのマフラーを贈ることだった。
ロウはマフラーを持っていないし、買う気にもなれないと言っていた。何せ普段過ごしている場所が灼熱のカラグリアなのだから、その必要もなければ手に入れる手段も限られているに違いない。入手したところでカラグリアに住む多くの人が引き出しの肥やしにしてしまいそうだ。
とはいえ仕事でシスロディアを訪ねる時のことを考えれば、まったく要らないというわけでもない気がした。それでなくともロウは世界のあちこちを飛び回っているのだから、その地方や時季に合わせた装備が必要だろう。これからもそういった生活を長く続けるのであればなおさら。
その一環として、マフラーを編むというのはとても良い案だと思った。プレゼントは何を貰っても嬉しいものだけれど、自分では買わないものを貰うとさらに嬉しさが増す気がする。
何より、これならほかの女の子たちと比べられないで済む。感謝祭にチョコレートではないものを贈るのもそうだけれど、カラグリアではおそらく入手の難しいマフラーだからこそ競合はしないはずだ。
それに私は――。
ふふ、とこみ上げてきた笑みを隠しつつ、私は店内で毛糸の棚を漁った。シスロディアからの馬車の上でロウには何色のマフラーが似合うのか考えを巡らせたが、なかなか答えが出せなかった。普段ロウが着ている服から考えると紫っぽい色が良いのかなとも思ったけれど、マフラーとなるとなんだか違う気がする。じゃあオレンジ? いや、それはロウがコートの上から身に着けるにはちょっと明るすぎるような……。なら青? 緑?
いろいろ考えた結果、無難に赤色がいいんじゃないかという結論に至った。あまり派手過ぎず鮮やかすぎず、それでいて暗すぎない落ち着いた赤色。
ところがその手芸屋さんにはこれだと思う色合いの毛糸は見当たらなかった。そもそも毛糸の種類自体が少なく、それも温暖な気候のメナンシアであれば仕方のないことなのかもしれない。店の主人にも訊ねてみたが、毛糸が入荷する機会もごく限られているとのことだった。
早くも計画がとん挫しそうになって、私は焦った。いやいや、これ以上の案もないのだから、まだ諦めるわけにはいかない。
とりあえずは目の前の約束を果たそうと、その足で真っすぐ宮殿へと向かった。
キサラは既に待ち合わせの場所に着いていた。いかつい鎧姿に似つかわしくない、絹のような金糸。その凛とした佇まいに目を引かれたのは、きっと私だけではないだろう。
「やあ、リンウェル。先日はすまなかったな」
全然、と首を振ると、私はブレゴンからの伝言を伝えた。
「返事には大体2週間くらいかかるって。返事の手紙を送るか、また使者を送ってもらうことになるだろうって。向こうも感謝祭のあれこれで忙しくしてるみたい」
「なるほどな。どこも同じような状況なんだな」
キサラは小さな苦笑いを浮かべた。きっと向こうの状況が手に取るようにわかるのだろうなと思った。
「この件については承知した。私から皆に知らせておこう。他に、何か伝えおくべきことはあるか?」
ううん、ないよ、と言いかけて、そこでふと思いついたことがあった。もしかしたら、キサラなら……。
「ねえ、この間、今回の埋め合わせしてくれるって言ってたけど……」
私は思い切って、キサラに事情を打ち明けた。
「ふむ、なるほど。それで赤色の毛糸が欲しいと」
「ヴィスキントの手芸屋さんにはなかったんだ。たぶん、シスロディアならもう少し種類があると思うんだけど」
こんなことなら先日シスロデンを訪ねた際に探してくるべきだった。まさか世界の中心とも謳われるヴィスキントにないものがあるとはつゆほども思わなかったのだ。
「最近はシスロディアとも交易してるんだよね? なんとか手に入れられないかな?」
私が両手を合わせると、キサラは顎に手を当てて悩む素振りを見せた。
「本来ならこういった融通は公平性に欠けるんだが……」
「そこをなんとか……!」
もう数秒考え込んだ後で、キサラはふふっと笑って言った。
「先に無茶を言ったのは私の方だしな。今回は特別、ということで用意させよう」
私は思わず「ありがとう!」と声を大きくした。勢い余って、そのまま鎧をまとうキサラの胸に抱き着く。
これなら何とかなりそうだ。感謝祭までは、あと2週間を切ったところだった。
数日後、直接私の元に送られてきた毛糸は、思い描いていた通りの色をしていた。暖炉の炎や果実ほど明るくもない。どちらかと言えば長い間熟成させた葡萄酒にも似ていて、それでいてそこまで渋すぎない赤色。頭の中でロウがこの色のマフラーを巻いているところを想像してみる。うん、なかなか悪くない。
私は用意していた編み棒を取り出すと、満を持して作業に取り掛かった。久々の感覚に腕も胸も高鳴るようだ。
何を隠そう、編み物は私の得意分野だった。幼い頃に母さんにいろいろ教わってからというもの、マフラーや帽子など、自分で身に着けるものは一通り編むことができたし、シスロディアに向かう時にいつも巻いているマフラーだって、ヴィスキントに来て時間を持て余している時になんとなく編んだものだった。
私が編み物を贈り物に選んだ理由。マフラーがロウに必要なものであるというのはもちろん、これだけは唯一キサラに教えを乞わなくても1人で完成させられる自信があったからだった。
勉強の息抜きがてら教えてもらったものが、まさかこんな形で役に立つなんて。それも自分のためじゃなく、誰かのために編み棒を持つことになるなんて。
人生何があるかわからないな、なんて思いながら編み棒と毛糸を手にしてみてふと思った。あれ、編みはじめってどうするんだっけ。記憶の引き出しを探りつつ、ああこうだったと思い出す。さすがに数年ぶりとあれば、多少ブランクもあるらしい。
いくら得意だったとはいえ、こんな状態で大丈夫かな。
そんな心配したのは最初の一日だけで済んだ。体で覚えたものは頭で思い出すよりも早く感覚を取り戻せるようで、マフラーの幅と長ささえ決めてしまえばあとはとんとん拍子だった。針を入れ、糸をかけ、引き抜いて、外す。ひたすらそれの繰り返し。
私は時間も忘れて編み物に没頭した。途中、お腹を空かせたフルルが鳴いても気が付かなかったくらいだ。服の裾をくちばしで引っ張られて、初めて時計を確認した。
そういえば過去にも似たようなことがあった。食事の時間だと言われても気が付かず、肩を叩かれてようやく手を止めたのだ。母さんはそんな私を叱ることなく、むしろ「リンウェルは集中力があるわね」と言ってくれた。あの時頭を撫でてくれた手のひらの感触は今でもよく覚えている。優しくて温かくて、それこそ編み上げたマフラーのように私を包んでくれる、そんな手。
もう二度と触れられないはずのその手に、編み物をしている間だけは何度だって撫でてもらえている気がした。
完成したのは編み始めてから1週間後のことだった。シンプルなつくりにするつもりがついつい凝りたくなって、結局縄の模様を2本入れることにした。両端にはフリンジもつけて、これなら市販品にも劣らないはずだ。
丁寧に折り畳んで紙袋に入れたはいいものの、さて、これをいつ、どうやってロウに渡そう。感謝祭のチョコレートの代わりにマフラーを贈ると決めたはいいものの、その具体的な贈り方までは考えていなかった。
ロウのことだから、そのうちひょっこりまたヴィスキントに現れるだろう。仕事のついでだとかなんとか言って、この家に顔を出すに違いない。いつになるかはわからないけれど、その時に渡すのが一番手軽で、悩まなくていい方法であることは充分わかっていた。
でも、これは一応感謝祭の贈り物なのだ。ほとぼりが冷めた頃に渡すのはなんとなく気が引ける。
それに加えて、これは私の勝手な考えだけれど、ロウにはその場でこのマフラーを着けてみて欲しい気持ちもあった。いくら頭の中で何度もシミュレートしたとはいえ、実際に巻いてみたらそれほど似合っていない場合だってある。自分の判断が正しかったか確かめる意味でも、できればロウとはシスロディアで会いたいと思った。
「ロウなら、今度シスロデンに行くみたいだぜ」
そう教えてくれたのは、たまたまヴィスキントを訪れていた〈紅の鴉〉のメンバーだ。
「この間〈銀の剣〉に送った書簡の返事を貰いに行くだとかなんとか。寒いからって苦い顔してたな、あいつ」
詳しい日程を訊ねてみると、それはもう数日後に迫っていた。そういえば、ブレゴンも返信は2週間後だとか言ってたっけ。
私はお礼を言って、急いで自宅に戻った。先日使ったばかりの鞄に着替えなどを詰め込んで、再び家を出る。いつもより賑やかさの増す通りを抜けた私は、翌日を待たずして馬車でシスロディアへと向かった。
シスロデンはこの間と随分雰囲気が違っていた。通りの建物には電飾がぶら下がり、街灯には模様の入った旗が下げられている。旧獄塔前の広場は普段から露店が並ぶ賑やかな場所ではあったが、この日はその倍くらいのお店がひしめき合っていた。
やっぱり感謝祭ってすごいな。あちこちにきょろきょろ視線を向けながら思う。ヴィスキントとはまた違った様子ではあるけれど、街中の雰囲気が盛り上がっているのが一目でわかるのだ。
その証拠に、道行く人の笑顔がどれもこれも眩しかった。露店の商品を並んで眺めたり、あるいは食べ物を買って分け合ったり。この場にいる誰もが弾んでやまない気持ちを共有しているみたいだった。すごいな、と思うと同時に、良いな、とも思った。こういう催しがいつまでも長く続けばいいと思った。
さて、ロウはどこだろう。〈紅の鴉〉のメンバーに聞いた日付は今日だったけれど、私はまだその姿を見つけられないでいた。本当は数日前から宿を取って張っていたのだが、さすがにこの時期は忙しくしているのか、街にも広場にもロウの気配はさっぱり感じられなかった。
とはいえ今日こそは会えるはず。私は朝早くに宿を出て、旧獄塔の辺りをぶらぶらしていた。コートのフードにはフルル、首には白いマフラーを巻いて、紙袋を片手に入り口の辺りを注視していた。
ロウを探しつつ、広場の露店を見回る中で気付いたことがあった。やっぱり、並んでいる商品にはチョコレートを使ったものがとても多いのだ。
もちろんそれ以外の雑貨やお土産も売られていた。とはいえどうしても目につくのは艶めくその色で、いつもはバゲットやブールが並ぶベーカリーでもチョコレート味の甘いパンが売られていたし、ドーナツ屋さんでの一番人気はチョコレートをかけたものだった。
もはや〈感謝祭にはチョコレート〉の定番は世界共通となっていた。だからこそカラグリアの女の子たちもチョコレート作りをしようと思い立ったのだろうし、むしろそれ以外の選択肢は初めから存在しなかった。敢えてほかの菓子を選ぶ理由もなければ、ましてやそれ以外のものを贈ろうという人なんかこの世でたった一人、自分だけなのかもしれない。
その事実に気付いた時、さあっと青ざめる思いがした。急に自分の作ったマフラーがとんでもなく場違いのもののように思えてきた。思い立ったあの時はこれ以外にはないと思っていたけれど、果たしてこれが正しい選択だったのか不安になってきてしまった。
ロウにとってまったく必要のないものだとは思わないけれど、感謝祭の贈り物として相応しいかはわからない。みんなと同じくチョコレートを渡した方が良かった気もするし、でも自信のないものを贈るのにもためらいがあるし……。
またごちゃごちゃと頭の中がこんがらがってきた。またあの時に元通りだ。部屋にこもってひたすら本をめくり続けていた、あの不毛な時に。
今からでもチョコレートを買ってしまおうか。ふとそんなことを思った。それでマフラーと一緒に渡せば、解決するかもしれない。
そう思って贈答用のチョコレートを見繕おうとした時、
「あれ、リンウェル?」
背後から掛かった声に、私は身体をびくりと震わせた。聞き慣れた調子の、聞き慣れた声。
おそるおそる振り返ると、やっぱりそこにはロウがいた。
「わあっ!」
今の今まで探していたのに、私の口からはそんな声が出た。なんてタイミングだろう。よりによって今……!
「お前、なんでここにいるんだ? またキサラの頼みか?」
私の心などいざ知らず、ロウはあっけらかんと訊ねた。「それとも観光か?」
「ち、違うよ。どっちでもない」
「じゃあ、なんでだ?」
きょとんとして首を傾げるロウに、都合のいい言い訳は思いつきそうになかった。
ああもう、こうなったら仕方ない。どうとでもなれ!
私は覚悟を決めると、腕を引っ張ってロウを広場の外へと連れ出した。
噴水前の人気の落ち着いたところまで来ると、私は持っていた紙袋をずいっとロウの前に差し出した。ロウは私の顔と紙袋を交互に見て、再び不思議そうに首を傾げた。
「なんだ、これ?」
「ほ、ほら、感謝祭の……」
そこまで言うので精いっぱいだった。ちょっと早いけど、とか、チョコじゃないの、とか、そんなことを口にする余裕はなかった。
「俺に、くれるのか?」
うん、と頷くや否や、ロウが紙袋を広げる。その瞬間、えっ、と声が上がるのが聞こえた。
「お前、これ……」
心臓がぎゅっと縮み上がるようだった。何を言われるのか怖くて仕方ない。さっきまで紙袋の紐を握りしめていた指は、驚くほどに冷たくなっていた。
こんなことになるなら、初めからチョコレートを用意するんだった。今頃になって押し寄せた後悔はもはや手遅れだ。
がっくり項垂れて顔を上げられないでいると、
「……すげえな!」
ロウが大きな声を出した。
「……え?」
視線を持ち上げると、こちらを見つめるロウの目がきらきら光り輝いているのがわかった。
「これ、マフラーだろ? 広げていいか?」
頷く前に、ロウがマフラーを取り出す。2メートル近いそれが、大蛇のように紙袋から現れた。
「うお、長っ」
「実はそれ、手編みなんだけど……」
「手編み!?」
その言葉を聞いた瞬間、ロウが悲鳴みたいな声を出した。「手編みって、誰の?」
「私の他に誰がいるの」
「そ、そりゃそうだけどよ」
どこか落ち着かない素振りを見せながら、ロウは再び手元のマフラーをしげしげと眺めた。時折「はあー」とか「すげえー」などとぶつぶつ呟いては、小さく息を漏らすのが聞こえる。
「なあ、つけてみてもいいか?」
「い、いいけど」
ロウはそう言って揚々とマフラーを巻き始めた。が、どうにも慣れていないらしい。端と端を見比べて混乱している姿を見て、私は思わず吹き出してしまった。
「ほら、貸して。こうやって巻くの」
私はロウからマフラーを取り上げると、その肩に改めてそっと掛け直した。首の周りをぐるりと一周し、先端を交差させて片側を引き抜く。数あるマフラーの巻き方の中でも、一番オーソドックスなものだ。
「おお!」
「長さもちょうどいいみたいだね」
全体像を眺めつつ、私は頷いた。幅も柄も思い描いた通り。何より、少しくすんだ赤色がロウの着ている紺のコートにとてもよく似合っていた。
悪くないどころか、とてもいい。そう思ったのはどうやら私だけではなかったようで、ロウは首元のマフラーを何度か撫でつけながら、満面の笑みで「ありがとな」と言った。
「これからありがたく使わせてもらうぜ」
その思い切りよく上がった口角を見て、私はようやく自分の選択が間違いじゃなかったと確信できたのだった。
「ところでなんでマフラーなんだ?」
ロウの疑問はごもっとも。私は近くのベンチに腰掛けると、これまでの経緯をかいつまんで話した。
「最初はチョコレートを手作りしようとか、いろいろ考えてたの。でもなかなかしっくりこなくって……。そしたらロウがこの間、ここで寒そうにしてるの見かけたから」
カラグリアの女の子たちと比べられたくなかった、ということはもちろん言わなかった。当然ロウが眺めていたレシピ本を買ったことも、理想の色の毛糸を手に入れるためにキサラのコネを使ったことも黙っていた。
このマフラーを編み上げるために要した労力や、味わった苦悩を明かす必要はないと思った。だって私はそんな話をしたくてマフラーを編んだわけじゃない。ただ日ごろの感謝を表したかっただけ、あわよくばそれでロウが喜んでくれたらいいなと、そう思っただけなのだ。わざわざそんな恩を着せるような真似はしなくていい。
それに――。
それだけ苦労しても贈りたかったなんて、自分の気持ちの強さを打ち明けているのとほとんど同じだ。
「なるほどな」
私の話を聞いて、ロウは首に私の編んだマフラーを巻いたまま、それでいて鼻の頭を相変わらず赤くしたままで頷いた。
「菓子じゃねえから驚いたけど、そういうことだったのか」
「ロウは私と違ってお菓子が大好きってわけでもないし、どちらかと言えば肉料理の方が喜びそうだし。なら食べ物にこだわる必要もないかと思って」
「いやまあ確かに肉は好きだけど、別に甘いものが嫌いってわけでもないぜ」
ああでも、酢豚に入ってるパイナップルは微妙だな、などとロウはわけのわからないことをつけ足した。
「とにかく、チョコを期待してたならごめん。両方用意すればよかったのにね」
私が苦笑いでそう言うと、ロウは「いいや、」と首を振った。
「俺はこっちの方が嬉しいぜ」
「そうなの? やっぱりチョコ、そんなに好きじゃない?」
「いや、そうじゃなくて、チョコは食ったら無くなっちまうだろ」
にかっと笑いながらロウは言った。「マフラーなら無くならねえし、なんか得した気分だぜ」
満足そうなロウの言葉を聞いて、私も思わず「何それ」と笑った。言いたいことはなんとなくわかるけれど、それにしても贈り物を損得で考えるなんて。ロウらしいと言えばそうだけれど、やっぱりどこかデリカシーに欠けるというか。
それでも、私もマフラーを贈り物に選んで良かったと改めて思った。
私の気持ちはチョコレートのように溶けたりしないし、無くなったりもしない。ロウが今言ったように。この先もずっと長く続いていくものなのだ。
感謝祭の贈り物が自分の気持ちを表すというなら、これほど相応しいものはない。当然のように、ロウはそんなこと、これっぽっちも気が付いていないのだろうけれど。
「じゃあ、今度は俺の番だな」
そう言ってロウはベンチから立ち上がると、私のことも目線で促した。
「俺の番って?」
「感謝祭だろ。チョコでもなんでも食べに行こうぜ」
好きな物買ってやる、とのロウの言葉に、私はフルルと顔を見合わせて歓喜した。ドーナツにケーキ、クッキーにマフィン。次々に思い浮かんだそれらがみるみる頭の中を埋めていく。
「そういうことなら早く行こ!」
はやる気持ちを抑えきれず、私はロウの腕を引いて今度は広場の中へと引き返す。大きく一歩前に踏み出すたび、あの甘い香りが強く香った。
今年もこの季節が来た。できれば来年も、同じように迎えられますように。
そんな願いを込めつつ、私はロウの半歩先を歩いたのだった。
終わり